ドローンで魚釣りをするのは違法?知らないと危ない航空法と地域ルールを解説

ドローン

最近、YouTubeなどの動画でドローンを使って沖合に仕掛けを運ぶ「ドローン釣り」を見かける機会が増えました。岸からでは届かないポイントを狙えるため、多くのアングラーが興味を持っています。しかし、安易に始めると警察のお世話になったり、重い罰金を科されたりする危険があることをご存じでしょうか。

結論から言うと、ドローンを使った釣りは「やり方次第では違法」です。単に空を飛ぶだけでなく、仕掛けを落とす行為そのものが法律で厳しく制限されているからです。この記事では、ドローン釣りを安全に楽しむために絶対に知っておくべき法律やルールの全体像を整理して伝えます。

ドローンで魚釣りをするのは違法?

ドローンを釣りに使う場合、まず立ちはだかるのが「航空法」という大きな壁です。この法律は空の安全を守るために作られており、ドローンの重さや飛ばし方について細かい決まりがあります。

まずは、ドローンで釣りをすることがなぜ法律に触れやすいのか、その中心的な理由を3つのポイントに分けて整理します。ここを理解せずに飛ばしてしまうと、知らぬ間に「犯罪」を犯してしまうことになりかねません。

仕掛けを離す行為は「物件投下」にあたる

ドローンで釣り糸やルアーを運び、狙ったポイントで切り離す。この一見シンプルに見える動作は、航空法では「物件投下」という非常に重い扱いになります。

航空法では、ドローンから物を落とす行為は原則として禁止されています。これは、落とした物が人に当たったり、落下によって機体のバランスが崩れて墜落したりするのを防ぐためです。たとえ軽いルアーやエサであっても、ドローンから切り離した瞬間に「物件投下」として扱われます。

「水面に優しく置くだけなら大丈夫では?」と考える方もいますが、機体から離脱させる行為そのものが規制の対象です。まずは「物を落とすには国の許可がいる」という事実を肝に銘じておきましょう。

物件投下のルールをまとめると次の通りです。

  • エサ、ルアー、重りなど種類を問わず切り離しは規制対象
  • 練習のために砂浜で物を落とすだけでも承認が必要
  • 無許可で行うと50万円以下の罰金が科される恐れがある

沖合まで飛ばすと「目視外飛行」になりやすい

ドローン釣りの魅力は、普段は届かない遠くのポイントを狙えることです。しかし、機体を遠くまで飛ばすと、別のルールである「目視外飛行」に抵触する可能性が非常に高くなります。

航空法では、ドローンを飛ばす際は「自分の目で機体を直接見続けること」が義務付けられています。波しぶきで見えにくくなったり、数百メートル先まで飛ばして機体の向きが分からなくなったりすると、その時点で目視外飛行という違反になります。

たとえモニター越しに映像が見えていても、それは肉眼で見ていることにはなりません。双眼鏡を使うのもNGです。

大海原では距離感がつかみにくく、思ったよりも早く機体を見失ってしまうものです。自分の視力がどれほど良くても、遠距離のポイントを狙うなら事前に国からの承認を得ておくのが無難でしょう。

100g以上の機体はすべてルールの対象

「自分のは小さなドローンだから大丈夫」という言い訳も、今の法律では通用しにくくなっています。現在、航空法の対象となるドローンの重さは「100g以上」と定められています。

釣りで使われるドローンは、仕掛けの重さに耐える必要があるため、そのほとんどが500gから1kgを超える中型以上の機体です。つまり、釣りで実用的に使えるドローンのほぼすべてが、国の厳しいルールの下にあると考えたほうがいいでしょう。

もし100g未満のトイドローンを使ったとしても、後述する漁業調整規則や条例などのルールからは逃れられません。まずは自分の機体の重さを正確に把握することが、ルールを守る第一歩となります。

以下の表に、航空法における主要な規制内容をまとめました。

規制項目内容釣りでの該当例
物件投下機体から物を切り離す行為の禁止仕掛けやルアーを海面に落とす
目視外飛行肉眼で機体を直接監視しない飛行の禁止沖合の遠いポイントまで運ぶ
距離の保持人や建物から30m以内の飛行禁止海岸にいる他の釣り人の近くを通る
特定空域空港周辺や人口集中地区での飛行禁止都市部に近い砂浜や港での飛行

航空法以外に注意すべき地域のルール

「国の許可さえ取ればどこでも釣りができる」と考えるのは早計です。海には、航空法とは別に、漁業に関わる人たちや地域住民を守るための独自のルールが張り巡らされているからです。

ここでは、見落とすと地元の漁協や警察とトラブルになりやすい「地域特有の規制」について解説します。

都道府県が決めている「漁業調整規則」を確認する

海で釣りをする際、航空法以上に注意が必要なのが、各都道府県が定めている「漁業調整規則」です。これは水産資源を守るためのルールで、実は一部の地域ではドローンの使用を明確に制限しています。

例えば静岡県などでは、無人航空機を魚群の探索や漁具の設置に使うことを控えるよう呼びかけていたり、規則で制限したりしている場合があります。これは、最新技術を使った採捕が、伝統的な漁業の秩序を乱すと判断されることがあるからです。

「自分の県は大丈夫だろう」と勝手に決めつけるのが一番危険です。

必ず釣りに行く先の水産課や漁協のホームページを確認し、ドローンを使った釣りが認められているか調べる癖をつけましょう。

漁業権がある場所では採捕の仕方に注意が必要

海には「漁業権」が設定されている場所が多く、特定の魚種を獲る方法が厳しく制限されています。ドローンを使って効率よく魚を釣る行為が、この漁業権の侵害とみなされるリスクがあるのです。

特に、ドローンのカメラで魚影を探し、ピンポイントで仕掛けを落とす行為は、現地の漁師さんからすれば「密漁」に近い行為に見えてしまうかもしれません。漁業権を侵害したと判断されると、高額な賠償金を請求されたり、刑事罰を受けたりすることもあります。

漁場は漁師さんにとっての仕事場です。

たとえ法的にグレーであっても、現地のルールを尊重し、不要な摩擦を避けるのがアングラーとしてのマナーです。

港や海岸の条例で飛行が禁止されていないか

最後に確認すべきは、市町村や港の管理者が定めている「条例」です。最近では、騒音や安全確保のために、公園や海岸全体でのドローン飛行を禁止している自治体が増えています。

港湾施設(防波堤など)は、そもそもドローンの離着陸自体を禁止しているケースが少なくありません。看板に「ドローン禁止」と書かれていなくても、管理規定で制限されていることがあります。

海沿いの自治体が公開しているルールをチェックする際は、以下のポイントを重点的に見てください。

  • 海岸法に基づく制限:砂浜でのドローン使用が可能か
  • 港湾法に基づく制限:堤防や港内での飛行が認められているか
  • 都道府県の迷惑行為防止条例:カメラ付きドローンによる撮影が規制されていないか

許可なしでドローン釣りをした際のリスク

「誰も見ていないから大丈夫だろう」という軽い気持ちが、人生を左右する大きなトラブルに発展することがあります。ドローン釣りを無許可で行った際のリスクは、単なる注意では済みません。

ここでは、実際に起こりうる法的な不利益や、事故が起きた際の深刻な状況についてお伝えします。

警察の捜査対象や書類送検になる可能性がある

ドローンの違法飛行に対する警察の目は、年々厳しくなっています。特に海岸線は海上保安庁や警察のパトロールも多く、目立つドローンは格好のチェック対象です。

もし無許可で物件投下(釣りの仕掛け投下)を行っている現場を見つかれば、その場で事情聴取を受けることになります。悪質な場合は、機体を押収されたり、航空法違反として書類送検されたりするケースも実際に起きています。

「知らなかった」では済まされないのが法律の厳しいところです。

前歴がついてしまうと、今後の就職や資格取得に響くこともあるため、決して軽く考えてはいけません。

過去には海岸での物件投下で摘発された例も

ドローン釣りにまつわる検挙事例は、既に日本国内で発生しています。過去には、国の承認を受けずに海岸で釣りの仕掛けを落とす練習をしていた男性が、警察の捜査を受けた事例が報告されています。

この事例で注目すべきは、「実際に魚を釣っていなくても、物を落とす練習をしただけでアウト」という点です。SNSや動画サイトに投稿した映像が証拠となり、後日警察が自宅にやってくるというケースも増えています。

ネット上の「やってみた動画」を鵜呑みにするのは危険です。

彼らが許可を取っているのか、あるいは単に運良く捕まっていないだけなのか、冷静に見極める目を持ってください。

事故を起こした際に保険が下りない

万が一、ドローンが墜落して誰かに怪我をさせたり、漁船を傷つけたりした際、無許可飛行だった場合は保険が下りない可能性が非常に高いです。

ドローン向けの賠償責任保険の多くは、「法令を遵守して飛行していること」が支払いの条件になっています。物件投下の承認なしに釣りをしていた場合は、規約違反とみなされ、数千万から数億円にのぼる賠償金をすべて自腹で払うことになりかねません。

自由な飛行には、それ相応の重い責任が伴います。

無許可で飛ばすということは、自分の人生を賭けたギャンブルをしているのと同じだと認識しましょう。

以下の表に、無許可飛行によるリスクを比較しました。

リスクの種類内容影響の大きさ
法的制裁50万円以下の罰金、書類送検、前歴非常に大きい
社会的信用氏名の公表、SNSでの炎上、勤務先への影響大きい
経済的損失機体没収、保険不適用による全額賠償破滅的

正攻法でドローン釣りを楽しむための手順

ルールが厳しいからといって、ドローン釣りが全面的に不可能なわけではありません。正しい手続きを踏めば、誰でも合法的に楽しむことができます。

ここでは、法律の網を正しくくぐり抜け、堂々とドローン釣りを始めるための3つのステップを解説します。

国土交通省へ「物件投下」の承認を申請する

ドローン釣りを始めるための最優先事項は、国土交通省への申請です。オンライン申請システム「DIPS 2.0」を使い、「物件投下」の承認を受けましょう。

この申請では、なぜ物件を投下する必要があるのか、どのような安全対策を講じているのかを詳しく説明する必要があります。単に「釣りがしたいから」と書くのではなく、周囲に人がいないことを確認する手順や、機体の不具合が起きた際の対応策を具体的に記すのがコツです。

承認が下りるまでには通常10開庁日(約2週間)ほどかかるため、釣行の計画が決まったら早めに動き出すことが大切です。

「目視外飛行」の承認もあわせて取得する

物件投下の申請をする際、セットで行っておきたいのが「目視外飛行」の承認取得です。たとえ目の届く範囲で飛ばすつもりでも、釣りに夢中になると機体を見失うリスクは常にあります。

最初から目視外飛行の承認を持っていれば、万が一機体が見えにくくなった際も慌てずに操作を続けられます。また、プロポのモニターで海中の様子を見ながらポイントを探すようなスタイルを希望する場合、この承認は必須となります。

物件投下と目視外飛行のセット申請は、ドローンアングラーにとっての「免許証」のようなものだと考えましょう。

飛行場所の管理者に事前の許可を取る

国の承認が下りた後、最後に行うのが「現場の許可取り」です。飛ばそうとしている場所が港なら港湾管理者、海岸なら自治体の窓口に連絡を入れましょう。

「国の許可はあるから勝手に飛ばしていい」という態度は、現地でのトラブルを招きます。「〇月〇日に、国の承認を得たドローンを使って釣りの撮影をしたいのですが、問題ありませんか?」と一言断りを入れるだけで、多くの場合はスムーズに受け入れられます。

地域のルールを尊重し、現地の管理者と良好な関係を築くこと。

これが、新しい遊びであるドローン釣りを世間に認めてもらうための、一番の近道になります。

海でのトラブルを防ぐための安全対策

海の環境は過酷です。強風、塩害、そして釣り糸という、ドローンにとっての「天敵」が揃っています。ルールを守るだけでなく、物理的な事故を防ぐための準備も欠かせません。

ここでは、海の上で機体を失わないため、そして誰にも迷惑をかけないための実践的な対策を紹介します。

釣り糸をプロペラに巻き込まない装置を使う

ドローン釣りで最も多い事故の原因が、プロペラへの釣り糸の巻き込みです。ラインが少しでも回転部に絡まると、機体は一瞬で制御不能になり、錐揉み状態で海へ落ちていきます。

これを防ぐためには、専用の「リリース装置」を導入するのが最も効果的です。

ラインを機体から十分に離した位置で保持し、ボタン一つで安全に切り離せる仕組みを持つ装置を選んでください。適当な紐で仕掛けを吊るすような代用は、絶対にやめましょう。

糸の巻き込み対策として、以下の点に注意してください。

  • 機体の真下ではなく、後方にラインが流れるよう重心を意識する
  • ラインがたるまないよう、リールのベール操作を慎重に行う
  • 糸がらみを防ぐため、強風時は無理に飛ばさない

向かい風やバッテリー残量の変化を計算する

海の上は常に風が吹いています。特に沖に向かって飛ばす際は、帰りが「向かい風」になることを想定しなければなりません。

行きはスムーズに飛べても、戻る時に風に押し戻され、手元に届く前にバッテリーが切れてしまう「バッテリー切れ墜落」は海釣りでの定番の失敗です。

バッテリー残量には常に30%以上の余裕を持ち、風が強くなってきたら即座に釣りを切り上げる決断力が求められます。

万が一の墜落に備えて機体保険に加入する

どれだけ注意していても、機械である以上、故障や墜落のリスクはゼロにはなりません。リチウムイオンバッテリーを積んだドローンが海に落ちれば、回収は困難ですし、環境への影響も懸念されます。

そこで、機体そのものの損害を補償する「動産総合保険」や、他者への賠償をカバーする「賠償責任保険」への加入は必須です。

最近では1日単位で入れるドローン保険も登場しています。

万が一の事態に「ごめんなさい」だけで済ませないのが、大人のアングラーとしての最低限の責任です。

周囲の釣り人や漁師との摩擦を避けるマナー

ドローンは音が大きく、見た目も目立ちます。自分は楽しく釣りをしているつもりでも、周囲の人にとっては不快に感じられたり、警戒されたりしているかもしれません。

トラブルを未然に防ぎ、ドローン釣りのイメージを悪くしないためのマナーを整理しました。

他の人の頭上や仕掛けの近くを飛ばさない

ドローン釣りの現場には、当然ながら他にもたくさんの釣り人がいます。他人の頭上をドローンが通過するのは、恐怖心を与えるだけでなく、相手の仕掛けと自分のラインが空中でお祭り(交差)する原因になります。

離着陸は人のいない広い場所で行い、飛行ルートもできるだけ人との距離を保つように設計してください。特に、誰かがキャスト(投球)している最中に横切るのは、重大な事故に繋がるため厳禁です。

空中でのマナーは、地上でのマナー以上にデリケートなものだと心得ましょう。

漁業関係者の作業を邪魔しない場所を選ぶ

海は漁師さんの生活の場です。漁船が通りかかる際や、近くで網を入れている時は、速やかにドローンを回収して作業を優先させてください。

低空で漁船の近くを飛ばしたり、作業中の様子を勝手に撮影したりする行為は、強い不信感を招きます。漁師さんからすれば、ドローンが何をしているのか分からず、「密漁を監視されている」あるいは「漁を邪魔されている」と感じるかもしれません。

「お邪魔します」という謙虚な気持ちを持ち、作業の邪魔にならないタイミングと場所を選ぶ。

これが、海という共有財産を使わせてもらうための基本姿勢です。

ドローン釣りが禁止されている釣り場には行かない

残念ながら、一部の有名な釣り公園や防波堤では、既にドローン釣りが全面的に禁止されています。過去にトラブルがあったり、安全管理が難しかったりするのが主な理由です。

「自分は許可を持っているからいいだろう」と強引に押し通すのは、さらに規制を厳しくさせるだけです。禁止されている場所には近づかず、ルールが許容されている場所で静かに楽しみましょう。

ルールを守る人が増えれば、将来的にドローン釣りができる場所がもっと広がるかもしれません。その未来を守るのも、今を生きるアングラーの役割です。

マナー向上のための3つの約束を挙げます。

  • 挨拶を欠かさない:近くに他の釣り人がいたら、飛ばす前に一言声をかける
  • 撮影に配慮する:人の顔が映るような低空撮影や、執拗な追っかけをしない
  • ゴミを捨てない:墜落させないことはもちろん、現場の環境を守る

まとめ:正しくルールを知ればドローン釣りはもっと楽しくなる

魚釣りにドローンを使うことは、現在の法律下では「無許可だと違法になる可能性が極めて高い」のが現実です。物件投下や目視外飛行といった航空法のルールに加え、地域の漁業規則や条例をすべてクリアしなければなりません。

  • 仕掛けを落とすには国土交通省の「物件投下」の承認が必要
  • 100g以上のドローンはすべて規制の対象になる
  • 地域の「漁業調整規則」や「条例」も忘れずに確認する
  • 安全対策と周囲へのマナーが、長く楽しむための鍵

ハードルは決して低くありませんが、正攻法で手続きを踏み、周囲への配慮を忘れなければ、ドローンは釣りの可能性を無限に広げてくれる素晴らしい相棒になります。ルールを味方につけて、安心・安全なドローンフィッシングを楽しみましょう。

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