農薬を植物にムラなく散布したり、水をはじきやすい植物に農薬を定着する目的で使用する展着剤。住友化学・日本農薬・石原バイオサイエンスなどがメーカーとして製造・販売を行っています。
こちらの記事では、展着剤の有効成分・分類(一般・機能性・固着性)を説明したうえで選び方となるポイントを紹介し、今売れている人気の展着剤を10個紹介します。
楽に効率よく除草・害虫駆除をしたい人の多くは展着剤を使っています。使い方も薬剤に混ぜるだけなので、使ったことがない人も本記事の選び方を参考にして展着剤を導入してみてください。
目次この記事でおすすめする商品
展着剤の用途
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植物や虫の表面には水をはじく構造(ロウで覆われている、細かい毛で覆われている等)を多かれ少なかれ持っており、この構造が散布した薬剤を弾いてしまい目的の効果が弱くなってしまいます。展着剤は水を弾く構造に対して、界面活性剤などの成分の性質を利用して水を定着させる目的で使用します。
除草剤・殺虫剤・殺菌剤などの植物に対して散布する薬剤と混ぜて使うことで、これらの薬剤の効果を弱めることなく与えます。本業農業で使用するほか、家庭菜園や週末農業、庭の雑草に困っている人などにとって利用する機会のある物です。
展着剤の原理
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展着剤の主な有効成分は界面活性剤です。界面活性剤は水と油を混ざりやすくする性質を持ち、家庭で使うものだと食器用洗剤やシャンプー・ボディーソープなどに含まれている物です。油まみれの皿に水をかけても弾かれるだけですが、洗剤を混ぜると水と混ざり合って皿に定着します。これとほぼ同じことを水を弾く植物に対して行っています。
更に展着剤によっては、植物に薬剤が浸透しやすいようにしたり、雨で流れにくいようにしているものもあります。これは界面活性剤の種類やその他成分が含まれているかの違いによるものなので、展着剤選びにおいては1つのポイントになります。
展着剤の使い方
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薬剤と混ぜて植物に散布して使用しますが、一般的に界面活性剤の含有量が多い順(展着剤⇒液剤・乳剤⇒フロアブル剤・水和剤)に混合します。商品のラベルに、使用上の注意点、使ってよい作物・薬剤、使用量・希釈量が記載されていますので、まずはラベルを確認するようにしてください。
乳剤や水和剤などの水に溶けにくい薬剤は元から界面活性剤を含んでいる場合もあります。なので、使用する薬剤の組み合わせによっては展着剤が不要(過剰だと薬害を起こす可能性あり)であったり、必要だったりします。目的は散布した液が植物に定着することなので、水が球になって弾かれないことを観察して必要最低限の展着剤を混ぜるようにしましょう。
展着剤の選び方
ここからは、展着剤の有効成分と大まかな分類という観点で展着剤の選び方を紹介します。同じ分類でも含まれている成分が異なる場合も多いので、自分が使用するものはきちんと考えて見極めたい人は成分まで確認すると良いかと思います。
有効成分で選ぶ
ここでは非イオン・陰イオン・陽イオンの界面活性剤、シリコン系、パラフィン、ポリオキシエチレン樹脂酸エステルという括りで紹介します。人や書籍によっては異なる分類がされていることもありますが、おおよそ一般的な見方から外れていないかと思います。
非イオン性界面活性剤
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表面張力を低下させて、水性と油性のものを混ぜる乳化の力が強く、水にぬれにくい植物や害虫への定着を良くします。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのエーテル系やポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのエステル系が非イオン性界面活性剤として使用されています。
陰イオン性界面活性剤
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表面張力を低下させて、粉末との混ざりをよくする分散性(懸濁性)が高く、水和剤などの沈殿しやすい粉末状の薬剤の混ざりを良くします。ポリナフチルメタンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのコハク酸塩が陰イオン性界面活性剤として使用されています。
陽イオン性界面活性剤
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表面張力を低下させて、繊維質への吸着力が高く、薬剤の浸透性を高めて害虫を防いだり、雑草を取り除いたりする防除効果を良くします。ポリナフチルメタンスルホン酸ジアルキルジメチルアンモニウムといったアンモニウム塩が陽イオン性界面活性剤として使用されています。
シリコン系
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非イオン性界面活性剤に含まれますが、シリコンであることで分けました。性質もほぼ同じと言えますが、特に植物の表面に薬剤が均一に濡れ広がる湿展性が高いです。ポリオキシエチレンメチルポリシロキサンがシリコン系として使用されています。
パラフィン
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パラフィンには界面活性剤のように表面張力を低下させる効果はありません。常温で白いロウ状の物質で、展着剤としては薬剤の外側に膜を張って雨で薬剤が流れることを防ぐ目的で使用されています。
ポリオキシエチレン樹脂酸エステル
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パラフィンと同様に、界面活性剤としてではなく雨で薬剤が流れてしまうことを防ぐ目的で使用されます。
大きく分けて3種類の分類がある
展着剤の機能面から一般的に3つに分類されています。これらの分類の中でも使用されている有効成分が異なっていたり、重複したりしていますが展着剤を選ぶ上で1つの目安として見ることができます。
展着剤の基本的な機能を有する一般展着剤
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薬剤の混合を促し、表面張力を下げて、植物や害虫への薬剤を付着を良くするという展着剤の基本的な機能を有するものです。ハイテンパワー・マイリノー・クミテン・グラミンS・まくぴか・ブレイクスルーなどの商品があります。
一般展着剤の機能+αの機能性展着剤
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一般展着剤の機能に加えて、薬剤を植物に浸透させる力が強いものです。ミックスパワー・スカッシュ・ワイドコート・ニーズ・ブラボー・サブマージなどの商品があります。
薬剤の流亡を防ぐ固着性展着剤
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一般展着剤としての機能はほぼ無く、薬剤が雨で流れないように植物に定着させる機能を有するものです。先ほど紹介したパラフィンとポリオキシエチレン樹脂酸エステルという有効成分が主成分となります。アビオンE・ペタンV・ステッケル・K.Kステッカーなどの商品があります。
適用作物・薬剤は展着剤のボトルのラベル情報で確認
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展着剤はぬれにくいイネ・ムギ・ダイズ・ネギ・キャベツ・サトイモなどに使用されることが多いです。モモ・ナシ・カンキツ・カキ・チャ・トウモロコシ・キュウリ・サツマイモといったぬれやすい作物に使用すると薬害になったり、薬剤が流れ落ちてしまったりすることもありますので、使用しない、もしくは使用する展着剤を厳選することが必要です。
また、どういった作物に使っていい物なのかが展着剤のラベルに記載されていることもありますので、安全に使用する為にもラベルの確認は必ず行いましょう。
展着剤のおすすめ人気ランキング10選
ここからは今売れている人気の展着剤を調査した結果をオススメとして10個紹介します。ここまでに紹介した有効成分・分類を網羅するように商品をピックアップしたので、お探しの展着剤が一つは見つかるかと思います。
1位 アグロカネショウ K.Kステッカー 500ml
分類:固着性展着剤
有効成分:ポリオキシエチレン樹脂酸エステル
雨の多い時期や散布間隔が長くなる時に
ポリオキシエチレン樹脂酸エステルが主成分の固着性展着剤です。一般的な展着剤は最初に入れますが、本商品は最後に入れます。植物の濡れやすさに応じて使用量を増減させるように注意書きがありますので、植物によらず、梅雨時期の防虫剤の効果を持続させたい人にオススメです。
2位 シンジェンタジャパン サブマージ 250ml
分類:機能性展着剤
有効成分:陰イオン性界面活性剤
きゅうり・トマトなどのうどんこ病防除剤に
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム50%が主成分の機能性展着剤です。薬剤を植物に均一に広げて、特に殺菌剤の効果を安定させてくれます。トマト・キュウリ・ナスなどを育てていて、うどんこ病に悩まされている人にオススメな商品です。
3位 住友化学 サントクテン80 500ml
分類:一般展着剤
有効成分:非イオン性界面活性剤
ぬれやすい植物まで広く使える
カラセンと畑作・稲作の除草剤には使用しないことが注意書きでありますが、それ以外の除草剤・殺虫剤などに幅広く使用できる一般展着剤です。植物によってきちんと希釈倍率を変えて薬剤を作れる人にとっては何かと役に立つ商品です。商品説明に希釈倍率と対応薬剤・植物は記載されています。
4位 花王 スカッシュ 5L
分類:機能性展着剤
有効成分:非イオン性界面活性剤
食品にも使われる成分を使用した安全性
食品添加物(乳化剤)としてパンなどにも使用されているソルビタン脂肪酸エステルを主成分とした機能性展着剤です。浸透性が強く、ダニなどの小さな害虫にもピッタリと薬剤が付着するので殺虫剤を効果的に使いたい人にオススメです。
5位 アビオンコーポレーション アビオンE 5L
分類:固着性展着剤
有効成分:パラフィン系
防除で気を張る時期のお供に
パラフィンを主成分とした固着性展着剤です。一応、固着性展着性の分類としていますが、成分を見るといくらか乳化剤自体も含まれているようです。リンゴやバラを始めとした防除を気にする作物に対して殺菌剤・防虫剤・殺虫剤と一緒に使います。どうしても薬剤の散布間隔が広くなってしまうけど防除もしっかりと行いたい人にオススメです。
6位 三井化学アグロ 展着剤 グラミンS 500ml
分類:一般展着剤
有効成分:非イオン性界面活性剤+陰イオン性界面活性剤
粉末剤も混ざりやすい
非イオン性界面活性剤に加えて、陰イオン性界面活性剤も含まれているので分散性が期待でき、有機リン剤やカーバメート剤などの殺虫剤の効果を向上させてくれます。ダニ剤にも適用可能。泡立ちが控えめなので、展着剤を混ぜた時の泡立ちが気になっている人にオススメです。
7位 アグロカネショウ ブラボー 500ml
分類:機能性展着剤
有効成分:陽イオン性界面活性剤
ハダニ・アブラムシなどの防除が難しい害虫の薬剤に
陽イオン性界面活性剤が、陰イオン表面の害虫の体表に付着し薬剤の浸透効果を付けてくれることが特徴です。カンキツ・リンゴ・ナシ・チャ・野菜類に使う殺虫剤・殺菌剤の展着剤を探している人にオススメです。リンゴの摘葉剤、温州みかんの摘果剤も適用対象となっています。
8位 住友化学園芸 ダイン 100ml
分類:一般展着剤
有効成分:非イオン性界面活性剤+陰イオン性界面活性剤
殺虫剤・殺菌剤・除草剤の定番展着剤
注意事項に適用禁止の薬剤の記載はなく、ほとんどの薬剤に使用可能であることから多くの人に定番品として購入されています。作物のうどんこ病対策の薬剤や、バラのアブラムシ対策の薬剤まで均一に植物に広がり、雨にも強いので防除に困っている人の助けになる商品です。
9位 日本農薬 マイリノー 500ml
分類:一般展着剤
有効成分:非イオン性界面活性剤
泡が立ちにくく、他の薬剤の泡立ちも抑える
低起泡性が特徴の一般展着剤で、薬剤調合時に噴霧器やボトルから泡が溢れることを防ぎ、調合量もわかりやすくしてくれます。他の薬剤の泡立ちも抑えてくれるので、泡立ちやすい陰イオン性界面活性剤を使用している人にオススメです。
10位 石原産業 まくぴか 500ml
分類:一般展着剤
有効成分:有効成分
日本初のシロキサン結合の展着剤
シリコン系として日本初の商品です。海外では機能性展着剤の1つとして約32種類あるようです。yahooショッピングの展着剤の売れ筋ランキングで1位となっており、園芸をしている人のブログを見るとバラを綺麗に咲かせている人が「まくぴか」を使っていました。バラの薬剤関係で悩んでいる人は選択肢の1つに考えてみることをオススメします。
アグロカネショウ K.Kステッカー 5……
1,175円
シンジェンタジャパン サブマージ ……
950円
住友化学 サントクテン80 500ml
1,030円
花王 スカッシュ 5L
10,800円
アビオンコーポレーション アビオ……
7,000円
三井化学アグロ 展着剤 グラミンS ……
428円
アグロカネショウ ブラボー 500ml
1,242円
住友化学園芸 ダイン 100ml
228円
日本農薬 マイリノー 500ml
517円
石原産業 まくぴか 500ml
3,099円
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製品
最安値
評価
リンク
3.5
4.3
5
4.55
4.5
5
展着剤の代用品として中性洗剤は使える?
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中性洗剤にも展着剤の有効成分である界面活性剤が含まれているので、表面張力を下げる効果はあります。しかし、使用対象が違いますし、除菌・殺菌を目的としている成分が植物にどのような影響を与えるか分からないところがあります。代用品としては不安が残る部分がありますので、植物には展着剤を使用するのが安心かと思います。
まとめ
展着剤はやみくもに多量に使えば良い物ではありませんので、大切な植物を元気に育てる為にも用法・注意事項を必ず守って使いましょう。他の薬剤との相性もあり、いくらか経験がものを言う面もありますが、丁寧に植物を観察して目的である植物に水が弾かれることなく均一に広がることを確認しましょう。